用語目次:高圧洗浄

北九州水道修理隊

収録水道用語解説

高圧洗浄
高圧洗浄は、水道施設や配管システムの維持管理において不可欠な作業のひとつであり、水を高圧で噴射することにより管内や設備表面に付着した汚れ、スケール、錆、バイオフィルム、油脂類、その他堆積物を物理的に除去する技術である。化学薬品を使わずに洗浄力を発揮できるため、環境負荷の低減、安全性の向上、効率的な洗浄作業の実現といったメリットがある。水道関連においては、上水道・下水道の配管内部、排水桝、グリストラップ、マンホール、貯水槽、排水処理施設、ポンプ設備、雨水排水路など、広範囲の設備に適用されている。以下に、高圧洗浄の原理、機器構成、具体的な施工手順、対象設備別の応用、メンテナンス面での重要性、安全管理などを詳細に解説する。

1. 高圧洗浄の原理と機構
高圧洗浄は、ポンプにより加圧された水をノズルから高速で噴射させ、その運動エネルギーによって対象物表面の付着物を除去する方法である。使用される圧力は用途によって異なるが一般的に7?35MPa(約70?350気圧)程度であり、特殊用途では70MPa(700気圧)を超える超高圧洗浄も用いられる。水の噴射角度やノズル形状を調整することで、広範囲洗浄、集中削り取り、回転洗浄などのさまざまなパターンが可能である。近年は制御技術の進化により圧力・水量の自動制御や複数ノズルの同時使用、遠隔操作による自動運転も普及している。
2. 高圧洗浄機の構成要素
高圧洗浄を行う際には、以下のような機器と部材が使用される:
・高圧ポンプ: エンジンまたは電動モーターにより稼働し水を高圧に加圧する。
・高圧ホース: 高い圧力に耐える構造で、柔軟性と耐摩耗性が求められる。
・洗浄ノズル: 直進型、回転型、広角型などがあり用途に応じて交換可能。
・ホースリール・キャリー台車: ホースの持ち運びや現場作業を円滑にする。
・水供給装置: 水道水やタンク水を安定供給するための装置。
・安全装置: 過圧時の自動停止装置や緊急停止ボタンなど。
洗浄対象が長距離に及ぶ下水管や大口径の配管の場合は、特に強力な動力源と耐久性のある構造が必要となる。
3. 高圧洗浄の施工手順
高圧洗浄の作業は、次のような手順で行われる。
●事前調査・現場確認
配管の口径、延長、曲がり、堆積物の種類、構造上の障害物などを確認し適切なノズル形状・洗浄圧力を選定する。
●機器準備と安全確認
洗浄機の設置、高圧ホースの接続、遮断弁の確認、安全囲いの設置、作業員への保護具の装着などを実施。
●洗浄作業の実施
ノズルを配管内に挿入し適切な速度で後退させながら洗浄する(プルバック方式)。ノズルが回転しながら前進・後退するタイプもある。
●作業後の確認・記録
配管内の状態をファイバースコープなどで確認し、堆積物除去の程度を記録する。再発防止のため、必要に応じて清掃周期の見直しも行う。
4. 対象設備別の応用例
高圧洗浄は、多様な水道関連施設に適用可能である。以下は代表的な応用例である。
●上水道配管内のスケール除去
配水管内には長年の使用によりスケール(カルシウムや鉄分など)が付着する。これが赤水や圧力低下、管閉塞の原因となるため、定期的に洗浄が必要である。塩素水での洗浄や空気洗浄と比較して、高圧洗浄は短時間で広範囲のスケール除去が可能。
●下水道管・排水桝の詰まり対策
生活排水に含まれる油脂、ヘドロ、トイレットペーパーなどが溜まり、下水管が閉塞すると悪臭や逆流の原因となる。高圧洗浄はこれらを物理的に取り除く手段として非常に有効で定期的な清掃管理が自治体で義務化されていることもある。
●貯水槽・受水槽の洗浄
建物内の貯水槽は、定期的な清掃が義務づけられている。内部にこびりついた藻類、バイオフィルム、堆積物を除去するため、高圧洗浄が用いられる。槽の材質により圧力を調整する必要があり、FRP製槽では過度な圧力をかけないよう注意が必要。
●グリストラップの洗浄
飲食店や食品工場の排水処理に設けられるグリストラップは、油脂や食べカスが堆積しやすい。これを放置すると悪臭・虫害の原因になるため、定期的な高圧洗浄が行われている。ノズルで細部まで入り込み、スラッジを確実に除去することが重要。
5. 安全管理と注意点
高圧洗浄作業には強い噴射力が伴うため、以下のような安全管理が不可欠である。
・飛散防止: 周囲への水飛沫・汚泥の飛散を防止する囲いやシートの設置。
・保護具着用: 作業員は防水性のあるゴーグル、耐水手袋、防水エプロン、安全靴などを着用。
・圧力設定の適正化: 対象物の材質に応じて圧力を調整し破損を防ぐ。
・換気・排気の確保: 地下ピットや密閉空間では有毒ガスの滞留を防ぐため送風機などで換気を行う。
・電源・エンジンの取り扱い: 火気厳禁の場所ではエンジン式機器の使用を控え電動式の使用を検討する。また、施工業者は作業前にリスクアセスメントを実施し作業手順書に基づいた行動が求められる。
6. 高圧洗浄の将来展望
近年では高圧洗浄と映像機器を組み合わせた遠隔操作型ロボット洗浄機やAIによる堆積物検知システムの開発が進んでおり作業の自動化・無人化が期待されている。また、節水の観点から再利用可能な水循環式の高圧洗浄機や、超音波と高圧水を組み合わせた複合技術の実用化も進行中である。環境保護意識の高まりと相まって、化学薬品を用いないメンテナンス手段として、今後も高圧洗浄の重要性はますます高まると予想される。



水道修理サポート受付
copyright©2024 北九州水道修理隊 all rights reserved.